【仏教入門(2-6)】仏教誕生編。老・病・死を超えて:ブッダの苦悩と決意

四門出遊

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今回は、ブッダの伝記である『ニダーナカター』に基づき、ブッダの生涯についてお話しいたします。これまでと同様、悟りを開く以前のブッダのことを「菩薩(ぼさつ)」と呼びます。今回は、前回に引き続き、菩薩の青年期についてのお話です。

菩薩、人間の宿命を知る

菩薩が出家しないよう、父であるスッドーダナ王は息子を世間から隔離して育てていました。しかし、菩薩も年頃になり、ついに園遊(えんゆう:王子の外出)に出かけることとなります。これは次の王として、民の暮らしを視察する目的もあったのかもしれません。

最初の門をくぐり、街を進むと、菩薩は初めて老人を目にします。白髪でしわが多く、腰が曲がり、杖にすがって歩くその姿に驚き、付き人に「あの男は普通の人と違って見える」と尋ねます。付き人は「彼は老人でございます」と答えました。

初めて老いを目にした菩薩は、「老人とは何か」と問い、「老人とは余命わずかな者のことです」と教えられます。さらに「私もそうなるのか?」と聞くと、「誰も老いを免れることはできません」と答えられました。それを聞いた菩薩は深い衝撃を受け、気持ちが沈み、宮殿へと引き返してしまいます。

その様子を見たスッドーダナ王は、「今回は方角が悪かったのだろう。別の門から出かけてみなさい」と菩薩に勧めます。次の園遊では、顔色が悪く、起き上がれず、他人に看病されている人を目にします。これも初めて見る病人の姿でした。自分も病にかかると知り、再び心を痛めて宮殿に引きこもります。

しばらくして再び別の門から外出した菩薩は、今度は葬儀の準備をする人々と、横たわる死人を目にします。自分もやがては死に、存在が消えてしまうという現実に恐怖を覚えます。これまで享受してきた豪華な生活が無意味に感じられ、「私がしてきたことには何の意味があったのだろう」と深く思い悩むのです。

どれほど美味しいものを食べても、美しい女性たちに囲まれても、豪奢な生活をしても、死が避けられないのであれば、それらは無価値ではないか——そう感じたのでしょう。豊かな暮らしをしていたからこそ、その苦悩はより深かったのです。

そんな様子に耐えかねたスッドーダナ王は、最後の門からもう一度出かけるように促します。そこで菩薩が出会ったのは、剃髪し質素な衣をまとった一人の出家者でした。その凛とした姿に驚き、菩薩は思わず声をかけます。出家者は「私は常に修行に励んでいます」と語りました。

老いや病、死があるにもかかわらず、出家者は穏やかに生きている。その姿に菩薩は心を打たれ、「自分もあのようになりたい」と思います。これが「四門出遊(しもんしゅつゆう)」という有名なエピソードです。四つの門からそれぞれ外出し、老・病・死・出家という四つの光景を目の当たりにしたことから、この名がつけられました。

仏教の核心

この物語は、仏教がどのような教えであるかを象徴的に示しています。老い・病・死という苦しみは誰にでも訪れるもの。しかし、修行を通してそれを乗り越えることができる——それが仏教の核心であると理解できます。

古いお経『スッタニパータ』には、ブッダの言葉として次のように記されています。

「世界はどこも堅実ではない。どの方角もすべて動揺している。私は頼るべき住処を求めたが、死や苦しみに侵されていない場所は見つからなかった。」

どれほど理想的な社会が築かれ、平和な時代が訪れても、老い・病・死の苦しみは個人に必ず訪れる。後の大乗仏教では、他者への慈悲や救済が強調されるようになりますが、仏教の原点は、まさにこの「私」に訪れる根本的な苦しみを解消することにあります。

その後、菩薩は次第に出家への思いを強めていきます。しかし、すでに結婚しており、ついには子どもが生まれます。その誕生に際し、菩薩は「束縛が生じた」と語ったと伝えられています。一見ひどい言いように思えるかもしれませんが、裏を返せばそれほどまでに愛おしい存在であったということです。

この頃の菩薩は、現代で言えば「うつ病」に近い精神状態にあり、出家することだけが救いの道でした。その中で愛する我が子が生まれたことにより、出家への決意が揺らいだのだと思われます。だからこそ「束縛」と表現されたのでしょう。

この子どもは、「束縛」を意味する「ラーフラ」と名付けられました。ただし、別の説として、誕生時に月食(ラーフ)が起こったことに由来するともいわれています。

次回は、いよいよ菩薩が出家を決意するお話をいたします。

※この記事は以下の音声コンテンツをもとに作成されています。音声配信では、記事にはないアフタートークも収録されておりますので、ぜひお聴きください。