【仏教入門5-6】幸せも悟りも3ステップから。

ブッダ

皆さん、こんにちは。六話にわたってお届けしてきた「晩年のブッダ編」も、今回が最終回となりました。

前回は、ブッダが悪魔との対話を通して、三か月後に自らの人生に幕を下ろすことを決意した場面を扱いました。ここからブッダは、現代でいう「終活」を始められることになります。終活とは、自分のためというより、遺される人々が困らないように行うものですが、ブッダもまさにその視点を強く意識して行動されていきます。


アーナンダへの告知と「三つの学び」

まずブッダは、自らが死を決意したことを付き人であるアーナンダ尊者に告げます。アーナンダ尊者は必死に思いとどまるよう願いますが、ブッダはそれを退け、

以前、「望むならば長く生きられる」と示唆したとき、あなたは気が抜けていて願い出なかった。その責任はあなたにある。

と叱責します。

この場面は、アーナンダ尊者を不当に貶めているように見え、後世の加筆や、アーナンダ尊者を批判したい勢力の影響ではないかと考えられています。日頃から経典を読んでいる身としても、ブッダがこのような言い方をされるとは思えず、この場面には違和感が残ります。

続いてブッダは、アーナンダ尊者に弟子たちを集めさせ、教えを堅実に実践し、人々の利益のために広めるよう諭した上で、人生の終わりを宣言します。


バンダ村で説かれた「三学」──戒・定・慧

ヴェーサーリーでの滞在の後、ブッダはバンダ村へ移動します。ここで弟子たちに説かれたのが、悟りに至る三つのステップ、すなわち「三学(さんがく)」です。

1. 戒(かい)

五戒をはじめとする戒律を守り、節度ある日常を築く段階です。折り目正しい生活が整うことで、心の基盤が安定します。

2. 定(じょう)

次に、整えられた生活を土台として精神を集中させ、瞑想を深める段階です。

3. 慧(え)

定に支えられるかたちで判断能力が研ぎ澄まされ、心の不善な働きを正す智慧が生まれます。

この三つのステップは、悟りを目指す修行だけでなく、一般的な“幸せ”を求める場合にも、そのまま応用できる普遍的な方法です。
日常の整理(戒)→集中力の育成(定)→より良い判断(慧)という流れは、現代の私たちの生活にも深く通じています。


人類と「集中力」──文明をつくった力

特に「定」、すなわち集中力は、人間だけが長時間持続できる特性です。ほかの動物は外敵を警戒する必要があるため長く集中し続けられません。しかし人間は、食物連鎖の頂点に立つ過程で長時間の集中が可能となり、複雑な道具や文明を生み出しました。

料理、車の運転、読書、学習など、私たちの日常の多くは集中力によって成り立っています。集中力をどう養い活用するかは、人生の質に大きな影響を与えると言えるでしょう。

次回からは新シリーズ 「ブッダの最期編」 をお届けします。
どうぞ楽しみにお待ちください。

※この記事は、以下の音声コンテンツをもとにテキスト化したものになります。